現場のリアル

再生可能エネルギーの拡大と農地転用の関係

脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの導入は急速に拡大しています。特に太陽光や風力、バイオマスなどは地域に密着したエネルギーとして期待され、全国各地で新たな設備が設置されています。しかし、その裏側で大きな課題となっているのが「土地の確保」です。

太陽光発電設備の多くは平坦な土地を必要とするため、農地に設置したいというニーズが非常に多く寄せられています。ところが農地は農業を守るため厳しく利用が制限されており、無断で転用することは法律で禁じられています。農地を発電用地に活用するには「農地転用許可」を受けなければならず、この制度が再生可能エネルギー拡大のカギを握っているのです。

農地転用の審査では、営農への影響や地域農業の維持が最重要視されます。単純に「発電事業をやりたい」だけでは許可が下りません。たとえば、農業を継続しつつ発電を行うソーラーシェアリングの場合、作物の栽培計画や農作業の動線を具体的に説明し、営農が可能であることを証明する必要があります。

再生可能エネルギーの拡大は地球環境にとって大きな前進ですが、農地は国民の食料供給を支える大切な資源です。この二つをどのように両立させるかが今後の課題であり、制度的なバランスが常に問われています。

行政書士として感じるのは、農地転用の許可は「専門的な知識と緻密な準備」が成功のカギになるということです。地域の農業委員会や自治体との調整、必要書類の整備など、個人が独力で進めるのは難易度が高い作業です。適切な手続きを踏むことで、初めて「農業を守りながら再生可能エネルギーを拡大する」という社会的な使命を果たせます。

これから農地を活用して再生可能エネルギー事業を検討される方は、制度の仕組みを十分理解し、ぜひ専門家にご相談ください。地域に根差した持続可能なエネルギー社会の実現は、一つひとつの正しい手続きから始まります。

 

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