農地転用の周辺法令

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様々な規制への対応が必要です

農地転用許可やソーラーシェアリングの申請は農業委員会にて行いますが、基本的にはこの申請のみで事業が開始できるかというと、そうでもありません。なぜなら転用またはシェアリングのためには、その土地に様々な工作物や設備を設置するため、農地法以外の法令によってかけられた規制にも対応しなければなりません。

つまり、「農地転用の許可は取ったけれど工事ができない」という事態に陥る恐れがあるということです。
事前に許認可や届出を行わなければならない手続きが数多くあり、それらの知見が必要です。

1. 転用やシェアリング申請の前に行うもの

1-1.土地改良区の意見書  ⇒【申請後3営業日程度で交付】

申請地が土地改良区域内にある場合、管轄する土地改良区へ意見書交付申請をすることになります。各自治体に幾つか土地改良区事務所がある場合、自治体のサイト等で確認することが出来ます。
申請後、3営業日程度で意見書が交付される旨の連絡が来るので、再度事務所まで受け取りに行きましょう。

1-2.埋蔵文化財の照会 ⇒【申請後即日~1週間程度で回答】

農地転用許可申請をする場合、造成をするしないに関わらず、その土地が埋蔵文化財包蔵地に当たるかどうかの照会をかける必要があります。

1-3.農用地でないことの証明書交付申請 ⇒【申請後その場で交付】

農用地ではないことの証明をする書類(農業委員会ではなく、農政課等で発行してもらう)であり、多くの場合はその場で発行してもらえます。
(間違えやすいのが、農地でないことを証明する「非農地証明」とは別物ですので、注意してください。)
最近では添付不要なケースも増えているので、転用許可申請の必要書類に含まれるか確認が必要です。

1-4.水利組合の同意 ⇒【申請後1か月~3か月で交付】

申請地が水利組合管轄地内にある場合、同意書等を取得することになります。
例えば申請地に新たに浸透池や沈砂池を作り、雨水排水を全て敷地内浸透にする場合でオーバーフロー分が全くない場合などは、この同意が不要となるケースもあります。

1-5.法定道路払下げ願 ⇒【申請後3か月~半年程度で決定】

申請地に法定道路が通っていて、そちらも含めて計画地とする場合には、長期的な占用が出来ないため自治体から払い下げてもらうことになります。
道路課に申請をし、現地調査・境界確認を経て払下げをするかどうかの決定となります。
決定後には管財課等で払下げ金額の調整を行い、確定後に契約書の締結、決定金額の入金を経て、管財課又は申請者が変更登記申請を行い登記が完了します。この手続きは、かなりの時間を要することが多いです。

以上が農地転用許可申請前に済ませておく必要のある主な手続きですが、計画によってはこれ以外の手続きを要する場合もあります。
親切な自治体は、事前にどこの課でどういう手続きが必要となる可能性があるかアナウンスしてくれますが、「関連法令を読んで、自分で確認してください」と言われることもあります。
一口に関連法令と言っても、国土利用計画法や都市計画法といったスタンダードなものから、水源地域保全条例や森林法、土壌汚染対策法など、数多くの法令が複雑に絡み合っていて、確認するだけで一苦労です。
当事務所にご相談いただいた場合には、事前調査によりどのタイミングでどのような申請が必要かをリストアップしてお伝えしております。
ご自身で悩む前に、まずは一度、当事務所へお気軽にご相談ください。

2. 申請と同時に進める手続き

2-1.営農型発電設備の設置にかかるガイドライン

太陽光発電設備の設置に限った形で、県や市区町村で条例やガイドラインを制定しているところが増えてきています。このガイドラインに則った形で、関係各課との協議を行ったり、又は事業概要申請等を要求されたりします。
農業委員会事務局では、この事業概要申請が無事に受理されたことがわかる書類(受理印のある申請書第一面の写しなど)を添付することで、初めて農地転用許可申請を受理するところも多くあります。

2-2.伐採にかかる伐採届

造成のために地域森林計画の対象森林を伐採するためには、必ず伐採届が必要となります。
この伐採届は、伐採をする90日前から30日前までに提出する必要があるため、転用の許可を受け、工事を開始できる日から逆算して早めに提出するようにしましょう。

2-3.伐採にかかる林地開発許可

地域森林計画の対象となる民有林のうち、保安林を除くものを伐採する場合で、伐採範囲が1,000㎡を超えるものは小規模林地開発行為の届出が、1ヘクタール(10,000㎡)を超えるものは林地開発許可が必要です。詳細な準備が必要で、例えば行政や河川管理者との事前協議や、周辺住民への説明会の実施などを経て、許可申請を行うことになります。
申請書類は多岐にわたり、土地利用計画図のほか、計画縦横断面図や土量計算書など、専門的な書類を要求されます。
審査に時間がかかるだけでなく、事前協議から本申請まで長期となるため、手続き自体は農地転用許可申請前に進める必要があります。
中規模以上の伐採を伴う計画の場合、お時間や費用がかなり掛かることを覚悟したほうがいいでしょう。

2-4.発電設備設置届

自治体によって規模は様々ですが、例えば1,000㎡以上の太陽光発電設備を設置する場合には、この発電設備設置の届出が義務付けられている場合が多くあります。これは管轄の消防署へ提出する場合などもあるため、管轄の調査も事前に行う必要があります。
届出前に、設置する設備の詳細が分かる資料を持参して協議を要求されるケースも多々あります。

2-5.道路使用・占用許可

工事のために道路を通行止めにしたり、機材の搬入に頻繁に道幅の狭い道路を利用する場合には、この道路使用・占用許可を取得してから工事を行う必要があります。道路を通行のために利用する場合には道路使用許可、資材や看板を置いたり工事車両を停めて置いたりする場合には道路占用許可が必要です。

また、申請地を横断する形で道路や水路がある場合には、占用許可が必要なケースもありますし、道路上空部分に送電線を通す必要がある場合などは、法定外公共物使用許可を求められるケースなどもあります。

2-6.相続にかかる土地届(農地法第三条届出)

土地の全部事項証明書に記載の地権者がお亡くなりになり、土地届を提出していなかった場合に必要な届出となります。

2-7.賃貸借解約通知申請

転用を予定している農地について、現在借り入れている方がいる場合には、転用許可申請より前か、少なくとも同時に解約通知申請が必要です。

なお、土地謄本上には賃貸借の記載がない場合でも、農業委員会の記録で賃貸借が残っているケースがあります。申請前に、地権者にヒアリングを行い、現在残っている賃貸借契約がないか確認しておいたほうがいいでしょう。

2-8.埋蔵文化財包蔵地内における93条届

埋蔵文化財包蔵地の照会にて申請地が包蔵地内だった場合、着工の60日前までに文化財保護法第93条にかかる届出が必要です。この届出に基づき、県の教育委員会等が工事立会いや試掘調査の有無などが決定されます。試掘調査の実施が必要と判断された場合、工事計画に大きな影響を与えることになります。

以上が申請と同時進行する手続きの一例ですが、工事の規模や種類によっては、これ以外の手続きも必要となります。また、同時進行とは言っても、最初に記載した通り、これらの手続きの許可と農地転用の許可を同時に出す自治体も多くあります。
事前の下調べが不十分だと、農地転用許可の審査中に、事務局より「この手続きが終わってないので、こちらも進めてください。終わらないと転用許可が出ません」と言われてしまいます。
しかし一方で、一体どのような手続きが必要なのか、本当にこの手続きだけで足りるのか悩むこともあるかと思います。ご自身で悩む前に、まずは一度、当事務所へお気軽にご相談ください。

3. 許可取得後に行う手続き

3-1.軽微変更届

申請者の社名が変わった等、設置する設備の一部を変更する場合などで、計画全体に比して軽微な部分を変更する場合に提出が必要です。

3-2.事業計画の変更承認申請

許可を取得後、何らかの理由によって許可目的を達成することが困難となった場合、許可の取り消し処分が行われます。しかしながら、目的の変更を希望したり、別の事業者がその事業を引き継いだりするときには、事業計画変更の承認申請をすることが可能です。変更承認には審査が必要になります。

また、発電設備設置を目的とした転用の場合で、設置するパネルの枚数やレイアウトが大幅に変更となった場合には承認を得る必要があります。
承認まで工事がストップし、スケジュールに大きな影響があるため、計画を変更する際は慎重に検討してください。

3-3.工事進捗状況(完了)報告

転用許可を取得し、設備の設置工事が完了した際に提出します。また、自治体によっては、工事が完了するまでの間、3か月ごとに工事進捗状況を提出することが必要な場合もあります。

3-4.営農型発電設備の下部の農地における農作物の状況報告

ソーラーシェアリング申請に限ったものであり、毎年2月末日までに前年の収穫量を報告します。
ほとんどの自治体は1月~2月に申請者に記載例を付けた報告書が郵送されます。
届いた報告書に記載し、添付書類もあわせて提出します。添付書類は、収穫時の写真数点が必須で、自治体によっては販売先から受領した納品書や受領証の写し、収穫物をカゴに入れた写真、営農日誌などがあります。また、報告書には「知見を有する者の所見欄」があり、ここには申請時に意見書を書いていただいた知見者から、現在の生育状況へのコメントを記入してもらう必要があります。

以上が許可取得後に手続きが必要となる一般的な例です。
もちろん申請当時の計画のまま事業を継続できるのが一番ですが、様々な理由により計画を変更しなければならない時もあります。
また、日々の業務や生活の中で、この転用のみに意識を向け続けることが難しい場合もあり、そうなるとつい報告を怠ってしまうこともあるでしょう。
「そもそもこの変更の場合、変更届が必要なのか」をご自身で判断するのが難しいこともあると思います。
当事務所では、一度でもご依頼を頂いたお客様には期限管理を行い、必ず報告の時期にはご案内を差し上げております。また、ご自身では難しい判断に対し、お電話やメールにて明確なご回答を差し上げております。
ご自身で悩む前に、まずは一度、当事務所へお気軽にご相談ください。

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